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感染症情報

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季節(時候)・自治をはじめ、読者の皆様が今もっとも注目する【1つの感染症】をクローズアップし、その感染症情報と正しい予防知識を専門家の見地より、中野Drに分かりやすくご執筆いただきます。

第1回:新型インフルエンザについて

もうすぐインフルエンザの季節がやってきます、みんなが恐れる「新型インフルエンザ」は流行するのでしょうか?人類はこの冬にインフルエンザパンデミーを経験するのでしょうか?

1.「インフルエンザパンデミー」とは?

“pandemic”という医学英語は、直訳すれば“汎発流行性の”という意味です。「広範な地域、国、大陸、そこに住む人々を侵す疾患が流行し、多くの感染者や患者が発生すること」を指します。インフルエンザのみならず他の疾患でも用いられる言葉ですが、「インフルエンザパンデミー」とは、新型のインフルエンザウイルスが免疫のないヒトを襲い、世界的に大流行する状態をいいます。流行するウイルスは新型ですから、その病原体に対する抵抗力である“免疫”を、誰も持っていません。ですから、感染は世界中で広範かつ急速に拡大するわけです。

2.どんなウイルスが「新型インフルエンザウイルス」になるのですか?

厚生労働省によれば、「過去数十年間にヒトが経験したことがないタイプ(HAまたはNAの抗原変異による)のウイルスがヒトの間で伝播して、インフルエンザの流行を起こした時、これを新型インフルエンザウイルスとよぶ」とされています。例えば動物、特に鳥類のインフルエンザウイルスが人間世界に侵入し、その遺伝子に変異を起こしたり、ヒトのインフルエンザウイルスとの間で遺伝子の組み換えを起こしたりして、ヒトの体内で増える能力を獲得し、ヒトからヒトへと効率よく感染できるようになると新型インフルエンザウイルスが誕生するわけです。

3.過去に「インフルエンザパンデミー」が起こったことはありますか?

地球上で人類とインフルエンザウイルスは長いお付き合いであり、はるか昔から何度かの「インフルエンザパンデミー」を経験してきたことが推察されます。明らかな記録が残っているのは20世紀に入ってからであり、3回のパンデミーがありました。

年代 1918〜19年 1957〜58年 1968〜69年
出現した新型ウイルス A/H1N1亜型 A/H2N2亜型 A/H3N2亜型
流行した疾患の呼び名 スペインかぜ アジアかぜ 香港かぜ
  1. “スペインかぜ”の脅威
    1918年、第一次世界大戦の最中に始まったスペインかぜの被害は最大のものでした。WHOによると、世界人口の25〜30%が罹患し2,000万人から4,000万人の死者が出ました。日本国内でも、約40万人が死亡しました。米国での流行解析によると、通常のインフルエンザでは致死率(病気になった場合に死亡する確率)が最も低いはずの体力がある年齢層、15〜35歳の死亡が多かったとされますが、その理由はわかりません。
  2. 40年後に“アジアかぜ”、さらに10年後には“香港かぜ”
    1957年に現れたアジアかぜでは、世界中の死亡者数は200万人以上と推定されています。スペインかぜより死者が少なかった理由は、ヒトを死に至らしめるウイルスの病原性がスペインかぜに比べて弱かったためとも言われていますし、半世紀を経て医学の進歩、衛生水準や日常生活環境の向上があったことにもよるのでしょうか。
    1968年になり香港かぜが出現しました。この流行による世界中の死者は、100万人程度といわれます。20世紀になってから出現したH1N1亜型(スペインかぜ)とH3N2亜型(香港かぜ)2種類のA型インフルエンザウイルスの子孫たちは、今も世界の人々の間で流行を続けています。出現した当初は新型ウイルスでしたが、いってみれば今でも人類と共存しているわけです。
    香港かぜパンデミーから、すでに40年近くが経過しました。2005年までには新たなインフルエンザウイルスの出現は認められなかったわけです。しかし、20世紀にパンデミーが起こった間隔から考えればそろそろその時期では、と多くの科学者たちが予想しています。

4.「新型ウイルス」「インフルエンザパンデミー」の候補は?

これまでに起こったパンデミーは、すべて鳥世界からヒト世界に侵入した新型インフルエンザウイルスにより発生した可能性がきわめて高いと考えられています。そこで現在、東南アジアなどで発生しているH5N1亜型の鳥インフルエンザウイルスが、注目されているわけです。
今のところヒトにおけるH5N1亜型ウイルスによる患者は、病気のトリとの濃厚接触者などに限定されており、トリからヒトへの感染効率(感染のおこり易さ)は高いものではありません。また、ヒトからヒトへの感染が疑われるケースはきわめてまれにしか発生していません。しかしH5N1ウイルスがさらにヒトへの親和性を持ち、ヒト−ヒト感染が通常に起こるようになれば、新型インフルエンザの出現となります。
さらに脅威であるのは、このH5N1ウイルスは病原性が非常に高いということです。トリの大量死の報告は各地で報告されていますし、ヒトで公式に感染が確認された患者の致命率も60%におよびます。このようなウイルスが、ヒトの世界に侵入しはびこる前に、私たちは対策を急がねばならないのです。2006年10月時点で公式報告されている、年度・国別のヒトにおけるH5N1亜型感染者数・死亡者数を、WHO資料から引用し表にしました。

高病原性鳥インフルエンザA(H5N1)亜型ヒト感染例数
発生国 区分 発生年 合計
2003 2004 2005 2006
アゼルバイジャン 確定例 0 0 0 8 8
死亡例 0 0 0 5 5
カンボジア 確定例 0 0 4 2 6
死亡例 0 0 4 2 6
中国 確定例 1 0 8 12 21
死亡例 1 0 5 8 14
ジブチ 確定例 0 0 0 1 1
死亡例 0 0 0 0 0
エジプト 確定例 0 0 0 15 15
死亡例 0 0 0 6 6
インドネシア 確定例 0 0 19 53 72
死亡例 0 0 12 43 55
イラク 確定例 0 0 0 3 3
死亡例 0 0 0 2 2
タイ 確定例 0 17 5 3 25
死亡例 0 12 2 3 17
トルコ 確定例 0 0 0 12 12
死亡例 0 0 0 4 4
ベトナム 確定例 3 29 61 0 93
死亡例 3 20 19 0 42
合計 確定例 4 46 97 109 256
死亡例 4 32 42 73 151
死亡率(%) 100 70 43 67 59
※2006/10/16現在確定例数。死亡例数は確定例数の内数。