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インフルエンザ

予防対策

(1)うがい

うがいはなぜ必要か

うがいは、機械的な洗浄効果や、さらにうがい薬を用いた場合は、殺菌力や化学的洗浄効果によって、口腔を通じて侵入してくるウイルスや細菌などに対して効果を発揮します。うがいによって、口の中がスッキリしてリフレッシュした気分になったり、口臭を防いだり、虫歯や歯周病を防ぐのもこれらの効果の組合わせによるものです。

人の防御機能への効果

空気中の細菌やウイルスなどに対する人の防御機能として、まず、だ液などの分泌液には殺菌成分が含まれています。α-連鎖球菌などの口腔内の微生物は、外から来る細菌などが定着するのを防いでいます。ノドには細かい毛(線毛)と、その表面に粘液があり、この粘液が細菌やホコリなどをとらえ、線毛運動が粘液といっしょにこれらを外にむかって追い出します。それらを乗り越えて肺にまで達するものもいますが、肺にはマクロファージという細胞がいて、細菌を食べて消化して殺菌します。肺の好中球も同じように菌を殺します。

うがいは、口腔やのどを洗浄して、細菌やちり・ホコリなどを粘液といっしょに除きます。
また、のどを適度に刺激して粘液の分泌や血行を盛んにしたり、のどの潤いを保って、線毛運動の衰えを防ぐという効果が考えられます。

インフルエンザに対する効果

うがいの予防効果に科学的根拠がないといわれて久しかったのですが、最近、京都大学のグループよって、うがいの「かぜ」予防の有効性が科学的に実証されました。

2002〜2003年の冬場に、全国で18〜65歳の合計約380名のボランティアを、「水でうがい」、「ヨウ素系うがい薬でうがい」、「何もしない」の3群に分けた2カ月間の追跡調査が行われました。うがいは15秒を2度行い、1日3回以上実施されました。

その結果、「水うがい群」は対照の「何もしない群」に比べてかぜの発症が40%減り、うがいのかぜ予防効果が実証されました。

ただ、「ヨウ素系うがい薬群」では、対照群と差がなく、はっきりした予防効果がみられませんでした。この原因として、正常細菌のバランスが、薬によって壊されたためではないかと推測されています。

文献:

  • 川村 孝, 里村一成, 後藤雅史, 北村哲久, 系統的無作為割付対照試験による感冒の予防・治療体系の確立. Reserch Papers of The Suzuken Memorial Foundation, 22:42-45, 2005.
  • 里村一成, 川村 孝, うがいによる風邪の予防効果. Medical Practice, 23(8):1460-1461, 2006.

ただし、この試験では、調査対象からインフルエンザは除かれています。インフルエンザウイルスは、かぜのウイルスよりも感染力が強いと考えられるので、この研究結果が、インフルエンザに適用できるかどうかはわかりません。

インフルエンザの予防にうがいは効果がないのではないかと、その根拠としてよくあげられるのが、「インフルエンザウイルスは気道の粘膜に取り付くと約20分で細胞の中に取り込まれるが、20分毎のうがいは現実的でない」というものです。

ところが、紅茶による1日2回のうがいによって、インフルエンザの罹患率が低下したと専門誌に報告されています。 紅茶の予防効果は、その成分(カテキン)がウイルス粒子のスパイクへに付着して、細胞への吸着を阻止するためとされています。カテキンの効果については議論のあるところで、うがいによる洗浄効果によるものかもしれませんが、いずれにしても細胞の中に入ったウイルスに効くわけではありません。それでも、予防効果が見られたということは、ウイルスの侵入や吸着、細胞への 取込み は、1日中絶えず起こっているわけでもないのかもしれません。また他の要因によって、ウイルスの取り込みが遅いことがあるのかもしれません。

とにかく、うがいは、インフルエンザを含めかぜのような感染様式をもつ感染症には一定の効果は期待できると思われます。

うがいの有効性

うがいの有効性グラフ
  • うがい薬を使用して風邪予防に対するうがいの有効性について検討した結果、うがいの励行グループはうがい任意のグループと比べて、風邪の罹患率は有意に低く、うがい薬によるうがいは風邪予防に効果的であることが示されています(産衛誌 1996;38:217-222.)。
  • うがい薬は、気道内に付着した細菌やウイルスを体外へ洗い流す作用に優れ(吐き出した液の濁度の比較:うがい薬でのうがい後117、水うがい後50)、水うがいよりも効果があります。

口腔内や咽頭に存在する細菌(黄色ブドウ球菌、緑膿菌、インフルエンザ菌、セラチア菌、肺炎球菌など)は、プロテアーゼやノイラミニダーゼを産生し、歯周や咽頭の粘膜を覆っている粘液層を破壊し、上気道粘膜細胞がもっているインフルエンザウイルスなどのウイルスに対するレセプターを露出させることによって、ウイルス粒子の粘膜細胞への吸着を高めるといわれています。ノイラミニダーゼはインフルエンザのHAの開裂を促進させて、増殖したウイルスが細胞の外に出るのを助けます。したがって、ウイルスに直接効果がないとしても、うがいは、口腔内のプロテアーゼなどを産生する菌を減少させ、インフルエンザウイルスの活性化を阻止することによって、インフルエンザウイルスの感染を予防する効果が期待できます。

うがいの方法

「うがいのしおり」の効果的なうがいの仕方の図
  1. うがい液を口に含み、唇を閉じてほっぺたの筋肉を動かし、「クチュクチュ」と口の中を洗います。
  2. 次に上を向いて、「オオオ…」と声を出してのどを洗います。声がふるえはじめると、それはうがい液が口蓋垂の奥へ届いている証拠です(初めてのときはちょっとビックリします)。
  3. 冷たいうがい液が、口の中で温かく感じられてきたら吐き出します。
  4. この(1)〜(3)の行為を数回繰り返します。

うがい薬の選択

水だけのうがいでもかぜの予防効果があることが実証されましたが、適切なうがい薬を使用すれば、その効果がより高くなることが期待できます。

日常的なうがい

健康管理のための日常的なうがいには、安全性が高く、作用の穏やかなうがい薬(コロロやコロロSP)が有用と思われます。殺菌力はヨウ素系うがい薬と比較すると弱いものの、洗浄力があるため、殺菌とともに洗い流す効果が期待できます。「うがい薬コロロ」や「うがい薬コロロSP」は、学校や労働衛生の場で長年にわたって使用されてきた実績が、安全性の証明となります。

インフルエンザ流行時のうがい

インフルエンザの流行期間中は、のどに付着したウイルスや感染の手助けをする細菌をより確実に殺菌するために、殺菌力の強いヨウ素系うがい薬(コロロダイン)でうがいをするのがよいと思われます。

ただし、ヨウ素系うがい薬にはいくつかの欠点がありますので、注意が必要です。まず、独特の味があり、また刺激性が比較的強いため、好まない方もいますし、ヨウ素アレルギーの方もいます。日本人ではあまり問題になりませんが、血中のヨウ素濃度を高め、甲状腺異常の原因になるという指摘もあります。また、かぜの予防効果において指摘されたように、口腔やのどの常在細菌に影響を及ぼし、感染を起こしやすくするおそれがあります。

したがって、ヨウ素系のうがい薬を使用する場合は、自分の周辺に流行している時だけなど、比較的短い期間を決めて使用するのがよいと思われます。

うがいのタイミング

健康管理には、毎日定期的に。ちょっとした休憩やトイレにいったときなど、ついでにうがいをという感じで、毎日数回のうがいが習慣になることが、大切で効果的だと思われます。