Dr.大越コラム
海外派遣企業向けインフォメーション~西新橋発→→
Dr.大越のメッセージ~
海外派遣企業向けに世界地域別の感染症発生内容や危機管理情報を配信します。
- 氏名:
- 大越 裕文 氏
- 現職:
- 渡航医学センター 西新橋クリニック 院長
1981年東京慈恵会医科大学卒業、同大学第一内科助手。米国留学後、1994年から14年間、日本航空健康管理室に勤務、お客様健康問題対策、航空機内AED導入、客室乗務員教育を担当。2008年8月渡航医学センター西新橋クリニック院長。日本渡航医学会副理事長、日本宇宙航空環境学会理事。現在に至る。
海外感染症通信(2011年Vol.18)
今回のトピックスは、前回に引き続き、タイの洪水災害です。7月以来続いている豪雨による洪水は、タイの北部、中部に甚大な被害をもたらし、ついに首都バンコクに達しました。タイに進出している日系企業は、大きな経済的打撃を受けるとともに、今後二次的に発生する感染症対策が必須の状況となっています。
このような状況の海外派遣企業を支援する目的で、2011年11月2日、 "洪水災害における感染症対策セミナー" (渡航医学センター西新橋クリニック・サラヤ株式会社共催)を緊急開催しました。今回は、その概要を紹介します。
1.洪水による健康リスク
- 感染症
- 溺水、低体温、外傷
- 感電
- 犬・蛇などによる動物咬傷
- メンタルヘルス不全
- 化学物質よる環境の汚染・大気汚染
- 熱中症
- 医療アクセスの悪化による持病の悪化、急性疾患の悪化
- 汚水の経口感染によるもの:コレラ、A型肝炎、腸チフス等
- 汚水の皮膚の傷口や粘膜等からの感染によるもの:レプトスピラ症、結膜炎、破傷風等
- 蚊の発生増加によるもの:デング熱、マラリア等
- その他:インフルエンザ等
洪水後、二次的に発生する感染症は、洪水前の感染症の発生状況、衛生環境の変化、個々の感染症に対する抵抗力などが大きく関与します。バンコク周辺地域では、特に留意すべき感染症として、コレラ、レプトスピラ症、デング熱があげられます。マラリアは、平時にはバンコクではほとんど発生していませんでしたが、今回は大きな浸水被害を受けたことから、しばらくは流行に注意をする必要があります。
3.感染症対策
1)経口感染症対策
- 手洗いを積極的に行う。無理な場合、手指の消毒剤を使用する。
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- 水に濡れた食べ物は食べない。
- 食べ物は十分に火の通ったものを食べる。
- 停電した地域では、冷蔵庫に入っていた食品は破棄する。
- 安全な水がない場合、飲料水の浄水・消毒する。
- A型肝炎、破傷風、腸チフス、コレラ、インフルエンザ等の予防接種を必要に応じて受ける。
- 下痢をした際に医療機関を受診できない場合は、自己治療を行う。
2)蚊による感染症の対策
- 蚊に刺されない
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- デング熱対策は日の出から夕暮れ、マラリアは夕方から明け方に対策を行う。
- 外出時は長袖服、長ズボンを着用(薄手のものは危険)する。
- 虫よけ剤を使用(DEET30%以上)する。
- 防虫剤が付着した防虫ウエア(スコーロン)の着用する。
- 室内やベットへの蚊の侵入を防ぐ
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- 網戸と冷房が装備された3階以上の部屋に滞在する。
- 殺虫剤の散布(クローゼット、ベッドの下、カーテンの裏、風呂)する。
- 網戸設備が不十分だったら蚊取り線香や蚊帳(かや)を使用する。
- マラリア流行時は、予防薬内服/自己治療の準備
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- 予防薬はマラロン®(輸入)とメファキン®がある。
- 自己治療はマラロン®が一般的に用いられる。
- トラベルクリニックで相談する。
3)外傷や動物咬傷による感染症対策
- 防水具・防護具の着用する。
- けがをしたら傷口をきれいにし、必要に応じ破傷風のワクチン、あるいはγグロブリンの接種を病院で受ける。
- 犬に咬まれたら傷口をきれいにし、ワクチンの接種を受ける。
4)皮膚感染症対策
- 浸水している水をできるだけ浴びないようにする。浴びたらきれいな水で洗い流す。
- 傷があったら消毒し、抗生剤軟膏を塗布する。
- 傷口が赤くなったり、腫れ上がったり、膿が出てきたら、できるだけ早く病院で治療を受ける。
4.復旧作業者への健康対策
- 前述の感染症をしっかり行う。
- 以下の備品を準備する。
- 手指消毒用アルコールジェル、消毒シート
- 下痢時の自己治療薬:抗生剤、下痢止め、ORS
- 熱中症対策
- 浸水地域での活動
- ゴム長靴、ゴム手袋、(カッパ・ゴーグル・マスク )
- ライフジャケット(船で移動時)、ヘルメット
- 飲料用の水の確保:ミネラルウォーター、浄水器+滅菌薬剤
- 職場でのトイレの確保
- レプトスピラが流行した場合は、抗生剤の予防内服につき医師に相談する。
- 持病を悪化させないために、常用薬の長期処方を受けておく。
- 衛生的な施設に宿泊する。
今後、タイの事業所における感染症対策が必要となります。現時点で被害の程度にかかわらずできることは、感染症の情報収集、感染症の基本予防の教育、従業員個々への予防接種などの実施です。