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感染症専門家コラム
Dr.中野コラム

家族で知る感染症~Dr.中野の予防塾~

いざという時に役立つ、家庭向けの感染症予防が満載です!

氏名:
中野 貴司 氏
現職:
川崎医科大学 小児科 教授

1983年信州大学医学部卒業、1983年三重大学医学部付属病院小児科研修医、1984年尾鷲総合市民病院小児科、1985年国立療養所三重病院小児科、1987年ガーナ共和国野口記念医学研究所派遣(2年間)、1989年三重大学医学部小児科、1995年国立療養所三重病院小児科(この間、中国ポリオ対策プロジェクトへ1年間派遣)、2004年4月 独立行政法人化により“国立病院機構 三重病院”と改称、2010年7月 川崎医科大学小児科教授、現在に至る。

子どものインフルエンザワクチン接種量が変更になりました

日本で使われているインフルエンザワクチンは「不活化HAワクチン」で、米国の「不活化スプリットワクチン」と成分組成がほぼ同一の製剤です。ところがこの両ワクチンに関して、子どもの年齢別1回接種量はこれまでは異なっていました(表1)。米国では3歳未満は1回接種量0.25mL、3歳以上は0.5mLですが、日本では1歳未満0.1mL,1歳以上6歳未満0.2mL,6歳以上13歳未満0.3mL,13歳以上0.5mLという年齢で区分された小刻みな1回接種量でした。世界では米国の接種量が標準的に用いられ、日本の0.1 mL, 0.2 mL, 0.3 mLという規定がどのような理由で決められたのかについて、詳しい資料は残っていません。

2009年のA(H1N1)2009単価ワクチン(パンデミックが始まった頃「新型インフルエンザワクチン」と呼ばれたワクチンです)が日本で開発された際は、米国の規定量でも子どもに接種して、その効果と安全性に関する検討が行われました。その1年後の2010年秋には、3価の季節性インフルエンザワクチンを用いて同様の検討が成されました。その結果がまとめられ、2011年秋からは表1に示す新しい用量、すなわち海外と同じ国際標準の子どもの接種量が採用されることになったのです。接種回数が1回でよいか2回必要かを区分する年齢や条件、2回接種する際の間隔にはまだ微妙な差異がありますが、わが国もようやく国際標準に近づきました。

この改訂に際しては、欧州医薬品庁(EMA)による評価基準(The European Agency for the Evaluation of Medicinal Products: Committee for proprietary medicinal products (CPMP), Note for guidance on harmonization of requirements for influenza vaccines, 1-18,1997. CPMP/BWP/214/96)が用いられました(表2)。EMAは毎年季節性インフルエンザワクチンの製造株変更時に、この評価基準を用いてワクチンの有効性(免疫をつける力)を評価します。表2に示した3項目のうち、最低1項目以上は基準を満たすことが必要とされます。そして元来この基準は18歳以上の対象者に適用され、60歳を境に基準値はやや異なり、高齢者ではやや緩い基準値が用いられています。すなわち今回は、EMA の18~60歳の評価基準を準用して、日本の子どもたちにおける評価を年齢区分別に行なったわけです。

わが国では、4つのメーカーが不活化HAワクチンを製造しています。それぞれのメーカーが製造したワクチンについて、接種前後の抗体価の推移に関する年齢別の成績は、各メーカーのワクチンの薬剤添付文書や製品情報に記載されています。B型ウイルスに対する抗体反応や低年齢児の抗体反応は概して不良でした。一般にインフルエンザワクチンの効果は、子どもでは大人より有効率が低いという報告が多いです。1回接種量が増えただけで、予防効果が飛躍的に改善することまでは期待できないかもしれませんが、ワクチンはインフルエンザの予防に有効な手段であり、流行シーズン前に接種しておくことを是非ともお勧めしたいと思います。

表1. 不活化インフルエンザワクチン~子どもの用法・用量
  日本(旧) 日本(新) 米国**
1回接種量 1歳未満 0.1ml
1歳~5歳 0.2ml
6歳~12歳 0.3ml
13歳以上 0.5ml
6か月~2歳 0.25ml
3歳以上 0.5ml
6か月~2歳 0.25ml
3歳以上 0.5ml
接種回数 13歳未満 2回
13歳以上 1回または2回
6か月~12歳 2回
13歳以上 1回または2回
6か月~8歳 
1回または2回***
9歳以上 1回
2回接種時の
接種間隔
1~4週間 2~4週間
(13歳以上は1~4週間)
1か月以上
接種対象者 月齢の下限は規定なし 6か月齢以上(一社は1歳以上) 6か月齢以上

* 日本:「不活化HAワクチン」を使用
** 米国:「不活化スプリットワクチン」を使用
*** 米国では、9歳未満の子どもでも過去に接種したことがあれば接種回数は1回で可

表2. インフルエンザワクチンのEMA評価基準《ワクチン接種前後のHI抗体価で評価する》

  1. 抗体保有率
    接種後HI抗体価40倍以上の者の割合
    18-60歳未満:70%以上、60歳以上:60%以上
  2. 抗体陽転率
    「HI抗体価が接種前に<10倍かつ接種後40倍以上」または「HI抗体価の変化率が4倍以上」の者の割合
    18-60歳未満:40%以上、60歳以上:30%以上
  3. GMT変化率
    幾何平均抗体価(GMT)の接種前後の増加倍率
    18-60歳未満:2.5倍以上、60歳以上:2倍以上

※3項目のうち、最低1項目以上は基準を満たすことが必要と定められている。

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