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中野Drの専門家コラム

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中野先生のプロフィール

中野先生
氏 名:
中野 貴司(なかの たかし)
所属施設:
独立行政法人国立病院機構 三重病院
現 職:
臨床研究部 国際保健医療研究室長(小児科医)

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ザンビア・・・その国はどこにあるかご存知ですか?

1.ザンビアへの旅

4月にアフリカ南東部の国ザンビアへ出かける機会がありました。名古屋セントレアを出発して香港まで4時間のフライト。香港で4時間待った後、南アフリカ共和国のヨハネスブルグ行きに乗り換えました。香港〜ヨハネスブルグ間の飛行時間は13時間と長丁場です。ヨハネスブルグで再度2時間の待ち合わせで、ザンビアの首都ルサカ行きに乗り換え、2時間飛行機に乗ってようやく到着しました。ルサカ行き以外は、エコノミークラス座席はほぼ満席で、狭い空間での長時間は中年男にはかなり堪えましたが、はじめての地ザンビアへ無事到着しました。ルサカは海抜千数百mと高地であるせいか、西アフリカのガーナやニジェールの酷暑と比べて、特に私が訪れた4月はとても暮らしやすい気候でした。今回のコラムでは、海外旅行時の健康管理について触れてみましょう。

2.時差の克服

日常の生活リズムはなかなか簡単には変えられるものではありません。私の場合アフリカへの旅が多いので、時差は日本から7-9時間の遅れです。滞在先では、なるだけ早寝早起きを心がけています。ただし、ザンビアで朝の5時に起きても日本はもう正午ですから、かなりの朝寝坊ではありますが、太陽の動きに合った生活はアフリカの風土に適っていて健康的です。

時差克服のための秘訣として国際渡航医学会は、(1)昼間はしっかり太陽に当たること、(2)食べ過ぎないこと、を挙げています。滞在地で眠いからといって昼間からベッドでゴロゴロしたり、旅行中機内で食べ過ぎることは、時差ボケをさらに助長するようです。私の経験では、10時間以上飛行する航空機内では出来れば睡眠をとって十分休息することが時差ボケ克服に有効です。食事は一食くらいスキップしたほうが、体調は良好です。また、東から西に旅行した時より、西から東に旅行した時のほうが辛いことが多いように感じます。アフリカ旅行から帰国した後数日間は、日本で仕事しているとなかなか厳しい毎日です。

3.海外旅行中に発生する健康問題は?

やはり国際渡航学会のデータを引用してみましょう。10万人が途上国へ旅行に出かけたとして、軽症者も含めれば半数の5万人に何らかの健康問題が起こり、8千人は医師の診療を受け、300人が入院するとされています(図1)。欧米諸国への旅行では、これより頻度は少ないでしょうが、気候も食事も変わる海外では、国内に居るよりは体調を崩す人が多いと予想されます。

図1.途上国への旅行中に健康上の問題が発生する頻度はどのくらい?

では、海外旅行者はどのような病気に罹ることが多いのでしょう?図2をご覧ください。最も頻度が高いのは下痢です。これには赤痢やコレラなどの重症から、何となく便が軟らかいという軽症のものまで様々です。消化管感染症(病原微生物が腸に侵入し、病気を起こすこと)以外に、食生活や飲料水の変化も影響するのでしょう。次に多いのが呼吸器感染症(口や鼻から肺までに病原体が侵入し、病気を起こすこと)です。これも重症な肺炎から、私たちが日常よく経験するカゼまで多種多様です。その他には、熱帯地域に多いマラリアやデング熱、肝炎、腸チフス、皮膚疾患などが挙げられますが、それぞれの疾患の頻度は全体の中では数%にもなりません。昨年話題となった狂犬病も1%未満です。肺塞栓がその病態であるエコノミー症候群は最近しばしばとりあげられますが、そんなに起こるわけではありません。すなわち海外においても、日本で最も私たちがよく罹る病気であるカゼやお腹をこわすことが最も多いのです。

図2.では、海外旅行者はどんな病気に罹ることが多いのでしょう?

4.海外旅行中の健康管理の秘訣

私たちが日頃からよく罹る病気は、海外旅行中も高い頻度で起こるのです。それを予防するためには、日常から心がけている健康管理法を旅行中も維持することです。うがいや手洗いはもちろんですが、十分に睡眠や休息をとる、アルコールを飲み過ぎないようにして水分はこまめに摂る、食べ過ぎない、肌を露出しすぎることは急な温度変化に対応できないので避ける、紫外線が日本よりはるかに強い地域では日焼けにも細心の注意を払う、などです。せっかくの海外ですから、良い体調を維持して十分楽しんでください。

5.私はなぜザンビアへ?

話は戻りますが、私は今回なぜザンビアへ旅することになったのでしょう?私は三重病院で診療を行う小児科医ですが、三重大学医学部の教官も併任しています。今年度から医学部6年生が海外で1ヶ月の臨床実習を行うことになったため、その調整役として同行しました。文部科学省による“特色ある大学教育支援プログラム”の中で、三重大学医学部が採択された「海外医学部と連携した臨床医学教育」です。目指す目的は「世界に通用する臨床医学教育と国際社会で活躍する人材の育成」です。学生たちは旅費や滞在費は自分で工面しなければならないのですが、一学年100名中46名が海外を、うち22名がアフリカやアジアの途上国での実習を希望しました(図3)。

図3.文部科学省“特色ある大学教育支援プログラム” 「海外医学部と連携した臨床医学教育」(三重大学医学部)

私が20年前にガーナで暮らした当時は、まさか日本の医学部生が実習プログラムとしてアフリカを訪れることになろうとは夢にも思っていませんでした。時の推移と世界の変化には、本当に驚かされます。今回のザンビア短期滞在では、経済状態や医療資源は日本よりはるかに劣悪な途上国ですが、医学教育プログラムでは学ぶべき点も多いことを認識しました。機会があればどこかで紹介したいですが、世界の現場に出て教えてもらえることは本当に多いのです。三重小児科グループは、継続して途上国への協力に関わってきたからこそ、今回のようなプログラムを提供することができたと思います。これからも国際保健の分野における活動を、さらに活性化してゆくつもりです。私とザンビアへご一緒した3名の写真を掲載します。一緒に写っている彼は、三重大学大学院小児科へ国費留学生として6年間滞在し、その研究成果により日本の医学博士学位を取得したザンビア大学小児科James Chipeta先生です。今回の訪問では大変お世話になりましたことを、お礼申し上げます(写真1)。

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